小規模宅地等の特例は、自宅などの土地の相続税上の評価を最大80%引下げることになるとても重要な特例です。
今回は、国税庁が公開している質疑応答事例より、特に重要な事例をアップをして、皆様にご紹介したいと思います。
1.相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地に係る小規模宅地等の特例は適用できるのでしょうか?
【回答】
小規模宅地等の特例が適用される財産は、個人が相続又は遺贈により取得した財産に限られています。したがって、相続開始の年に被相続人から贈与を受けた土地の持分は相続又は遺贈により取得したものではありませんから、その贈与を受けた財産の価額が相続税法第19条の規定により相続税の課税価格に加算されたとしても、その贈与を受けた財産については小規模宅地等の特例の適用はありません。
また、被相続人から贈与を受けた土地の持分について相続時精算課税を適用する場合も、その土地の持分は相続又は遺贈により取得したものではありませんから、その贈与を受けた財産については小規模宅地等の特例の適用はありません。
【ポイント】
相続開始の年に受けた贈与財産は、あくまで贈与なので小規模宅地等の適用はできません。小規模宅地等は相続又は遺贈で取得した宅地に限られているためです。
小規模宅地等の特例を受けることができる宅地は、節税という観点では、贈与(暦年課税贈与、相続時精算課税)ではなく相続又は遺贈で譲る方がよいでしょう。
2.小規模宅地等の特例の対象となる「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定はどのように行うのでしょうか?
【回答】
被相続人等の居住の用に供されていたかどうかは、基本的には、被相続人等が、その宅地等の上に存する建物に生活の拠点を置いていたかどうかにより判定すべきものと考えられ、その具体的な判定に当たっては、その者の日常生活の状況、その建物への入居目的、その建物の構造及び設備の状況、生活の拠点となるべき他の建物の有無その他の事実を総合勘案して判定することになります。
したがって例えば、
イ 居住の用に供する建物の建築期間中だけの仮住まいである建物
ロ 他に生活の拠点と認められる建物がありながら、小規模宅地等の特例の適用を受けるためのみの目的その他の一時的な目的で入れた建物
ハ 主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で有する建物
については、被相続人等が居住していた事実があったとしても、被相続人等が生活の拠点を置いていた建物とはいえません。
【ポイント】
居住の用に供されていた宅地とは、生活の拠点として利用していたものかになります。
具体的には、水道光熱費の使用料、郵便物の配達先、運転免許証や住民票の住所、家屋に実際に住んでいる様子はあるか(電化製品、寝具、エアコン、調理器具や食器の有無)さらには近隣へ生活していたかの聞き込みなどで判断されます。
3.病気のため入院していましたが、退院することなくなりました。入院により空家となっていた自宅の敷地についての小規模宅地等の特例は適用できるのでしょうか?
【回答】
病院の機能等を踏まえれば、被相続人がそれまで居住していた建物で起居しないのは、一時的なものと認められますから、その建物が入院後他の用途に供されたような特段の事情のない限り、被相続人の生活の拠点はなおその建物に置かれていると解するのが実情に合致するものと考えられます。したがって、その建物の敷地は、空家となっていた期間の長短を問わず、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します。
【ポイント】
病気のため入院をし、そのままお亡くなりになった場合には、入院期間の長短に関わらず、入院前に居住の用に供していた宅地は小規模宅地等の特例の対象となります。
4.介護保険法の要介護認定を受けて、老人ホームへ入所しました。その後一度も退所することなく亡くなりました。老人ホームへ入所前に居住していた建物は空家となっていました。その建物の敷地についての小規模宅地等の特例の適用は受けることができますか?
【回答】
照会のケースにおける、被相続人が所有していた建物の敷地は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。
(理由)
相続の開始の直前において被相続人の居住の場合であっても
、
➀被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要の用に供されていなかった宅地等介護認定等を受けていたこと(注1)
➁その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等(以下「老人ホーム等」といいます。)に入居又は入所(以下「入居等」といいます。)していたこと
この2つの要件を満たすときには、その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等(その被相続人の老人ホーム等に入居等後に、事業の用又は新たに被相続人等(被相続人又はその被相続人と生計を一にしていた親族をいいます。以下同じです。)(注2)以外の者の居住の用に供されている場合を除きます。)については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当します。
(注1)被相続人が介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたかどうかは、その被相続人が、その被相続人の相続の開始の直前において要介護認定等を受けていたかにより判定します。したがって、老人ホーム等に入居等をする時点において要介護認定等を受けていない場合であっても、その被相続人が相続の開始の直前において要介護認定等を受けていれば、老人ホーム等に入居等をする直前まで被相続人の居住の用に供されていた建物の敷地は、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。
(注2)被相続人と入居等の直前において生計を一にし、かつ、その宅地等の上に存する建物に引き続き居住している被相続人の親族を含みます。
【ポイント】
相続の申告をする際には、下記の書類で証明しましょう。
・介護保険の被保険者証の写し、障害福祉サービス受給者証の写しなど。
・要介護認定等を受けていたことを明らかにする書類、施設等の入所契約書など、名称、所在地等の施設内容が記載された書類
5.単身赴任中の相続人が取得した被相続人の居住用宅地等の取り扱いは?
被相続人甲は、自己の所有する家屋に、長男、その長男の配偶者と同居していました(甲の配偶者は既に死亡しています。)。長男が転勤で大阪へ単身赴任となり、その後、この家屋には、甲、長男の配偶者が居住していましたが、甲が死亡したため、長男がこの家屋及びその敷地を相続により取得しました。なお、長男は相続税の申告期限において引き続き単身赴任の状態にあります。この場合、長男が取得した敷地は特定居住用宅地等である小規模宅地等に該当しますか。
【回答】
長男の配偶者及び子の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況からみて、当該家屋が長男の生活の拠点として利用されている家屋といえる場合、すなわち、転勤という特殊事情が解消したときは、その相続人の配偶者等と起居をともにすることになると認められる家屋といえる場合については、甲に係る相続開始の直前から申告書の提出期限まで長男の居住の用に供していた家屋に該当するものとみることができますから、長男の取得した宅地は特定居住用宅地等である小規模宅地等に該当することとなります。
【ポイント】
相続人の家族が引き続き元の住所に住んでおり、相続人は週末や連休、年末年始などの機会に家族の元に帰るのであれば、相続人の生活の拠点は元の住所にあると判断されます。相続人の「全生活の中心」は被相続人の居住する家屋にあり、赴任先の住所はあくまでも勤務のための仮住まいであると考えます。
6.人格のない社団が相続により取得した宅地は小規模宅地等の特例を適用することができるのでしょうか?
【回答】
人格なき社団は個人とみなされて相続税の納税が必要になります。ただ、小規模宅地等の特例の適用を受けることができる者は個人に限られており人格なき社団は含まれないことから、人格なき社団は、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
【ポイント】
人格なき社団(学術団体、学友会、PTA、マンション管理組合など)への贈与や遺贈は可能です。ただし贈与税や相続税を払う必要があります。宅地の遺贈を受けた場合、小規模宅地等の特例を受けることはできません。

