相続財産には不動産や現金、株式、投資信託、預貯金などさまざまな資産が含まれますが、金融資産(預貯金・株式・投資信託・債券・生命保険など)のみを相続した場合の相続税申告について紹介します。金融商品だけの相続は、不動産を含む相続と比べると手続きが比較的シンプルですが、評価方法や税務上の注意点を理解しておくことが重要です。
1. 相続税の基礎控除を確認
相続税は、相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合に申告と納税が必要です。
相続税の基礎控除額: 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、相続人が2人(配偶者と子1人)であれば、基礎控除額は3,000万円 + 600万円 × 2 = 4,200万円となります。
相続財産が4,200万円以下なら相続税の申告は不要ですが、これを超える場合は相続税申告が必要になります。
2. 金融商品の相続税評価方法
金融商品は、現金や預貯金のように額面で評価されるものと、株式や投資信託のように時価で評価されるものがあります。
① 預貯金
相続開始日(被相続人が亡くなった日)の残高が相続財産として評価されます。
評価額 = 死亡日の預貯金残高 + 未払利息
※ 普通預金の場合は、死亡日時点の残高のみで評価され、定期預金の場合は、死亡日時点での残高+既経過利息で評価されることが一般的です。
② 株式(上場株式)
以下の4つの価格のうち、最も低い価格が相続税評価額になります。
- 被相続人の死亡日の終値
- 死亡日の属する月の終値の平均
- 死亡日の属する前月の終値の平均
- 死亡日の属する前々月の終値の平均
③ 投資信託
投資信託の相続税評価額は、死亡日の基準価額(時価)が基準として、そこから「信託財産留保額」「解約手数料」「源泉徴収税額」などを控除して計算します。まずは、証券会社の取引報告書や残高証明書を確認し、保有数量を把握します。
④ 債券(国債・社債)
債券は死亡日時点の市場価格または額面金額で評価されます。利付債の場合は、未収利息も加算されます。
⑤ 生命保険(死亡保険金)
生命保険の死亡保険金は、相続財産ではなく「みなし相続財産」とされ、次の非課税枠が適用されます。
非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
例えば、法定相続人が2人なら500万円 × 2 = 1,000万円まで非課税となります。これを超える部分は相続税の対象となります。
3. 相続税の計算方法
相続税の計算は以下の手順で行います。
- 相続財産の総額を計算する(金融商品の合計額)
- 基礎控除を差し引く
- 課税遺産総額を法定相続分で分割し、各人の税額を計算
- 実際の遺産分割に応じて税額を調整し、納税額を確定
4. 相続税申告の手続きと期限
相続税申告が必要な場合、以下の流れで手続きを行います。
- 死亡届の提出(7日以内)
- 金融機関への手続き(相続手続き)
- 相続人の確定(戸籍謄本などを取得)
- 相続財産の評価(金融商品の評価額を確定)
- 遺産分割協議(遺産の分け方を決める)
- 相続税申告書の作成と提出(被相続人の死亡から10か月以内)
- 相続税の納付(原則として現金一括納付)
5. 金融商品の相続における注意点
① 預貯金の口座凍結
被相続人が亡くなると、銀行口座が凍結され、自由に引き出しができなくなります。相続人全員の合意が必要なため、事前に生活費などの準備をしておくと安心です。
② 株式や投資信託の価格変動
相続財産評価の基準日は死亡日ですが、相続手続き中に株価が変動することがあります。価格が大幅に変動する場合は、どの時点の価格を適用するのが有利か慎重に判断することが重要です。
③ 相続税の納税資金の準備
金融商品は現金化しやすいですが、一部の株式や投資信託は売却までに時間がかかることがあります。相続税は原則として現金一括納付のため、納税資金の準備が必要です。
6. まとめ
- 金融商品のみの相続でも、基礎控除額を超える場合は相続税申告が必要
- 預貯金、株式、投資信託などは死亡日時点の評価額をもとに相続税を計算
- 生命保険には非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用される
- 申告期限は「被相続人の死亡から10か月以内」、納税資金の準備も重要
- 預貯金の凍結や株価変動など、相続特有のリスクに注意する
金融商品のみの相続は、不動産が絡む相続よりシンプルですが、評価方法や税務上のルールを理解して適切に手続きを進めることが大切です。必要に応じて税理士に相談し、スムーズな相続手続きを行いましょう。
