令和6年12月に令和5年度の相続税税務調査の状況が国税庁より発表されました。
今回はその内容や税務調査の詳細についてご紹介いたします。


1.税務調査はどのような場合に入るの?

税務調査は、税務調査官が収集した情報などから申告額が実際の相続財産額より少ないと想定される場合や、申告が必要にもかかわらず無申告であると想定される場合に、実地調査が実施されます。また、適正に申告をしている場合でも、相続財産額が多額の場合には調査が入ることもあります。

2.どのような財産が調査で指摘されているの?

 

申告漏れ財産の金額として発表されたものは、

  • 1位 現金・預金
  • 2位 有価証券
  • 3位 土地

となっております。

➀ 第1位の現金・預金についての注意点!!

現金・預金については、名義預金(相続人名義の口座ですが、実際には被相続人の財産とみなされるもの)、ネット銀行の申告漏れが多くあります。そのため、被相続人(亡くなられた方)の預金だけではなく、相続人の預金についても相続税の申告の際には確認をしておくことが必要です。また、そもそも名義預金を作らないようにすることも相続税の対策としては大切です。

また、自宅や貸金庫に現金を保管している方については、自宅保管の現金についても適切に申告をする必要があります。相続人がその存在を知らずに漏れてしまうことがあります。税務調査では高い確率で存在がわかります。

➁ 第2位の有価証券についての注意点!!

有価証券については、近年ネット証券を利用する方が多く相続人の方が財産を把握できなかった場合が多くあります。ネット銀行で預金を預けている場合、仮想通貨にも同様の事が言えるのですが、相続の申告から漏れるだけでなく、そのまま誰にも引き継がれるがない財産となってしまう可能性もあります。そのため、被相続人の方のメールやパソコンの閲覧履歴を確認し、ネット証券や銀行との取引がなかったか確認をすることが大切です。

申告が漏れてしまうと、過少申告加算税と延滞税というペナルティの税金が発生します。申告もれの財産額が多いほど、このペナルティの税金の負担は大きくなります。とくに仮想通貨や有価証券は購入当時の金額でなく相続開始時点の時価評価で申告を行います。予想以上に評価額が高くなることがありますので注意をしてください。

また単元未満株は株券の電子化にともない申告から漏れることが多くなっています。配当計算書などから単元未満株がないか、または証券保管振替機構に問い合わせをするなどして、しっかり把握するようにしましょう。

➂ 第3位の土地について注意点!!

土地が共有名義となっており被相続人以外の方が固定資産税の支払いや管理をしており、所有していたことに気づきにくいケースがあります。

先代名義の不動産の遺産分割が確定しなかった、または登記をしていないために、相続財産として漏れてしまうことがあります。そのため名義が先代のままの財産がないか事前に確認をしましょう。

また山林や住所地とは違う地域の不動産などを保有しているケースで、固定資産税評価額が30万円未満の場合には固定資産税がかかりません。そのため、こちらも漏れやすい財産となります。

(対策)

不動産を漏らさないために役所で「名寄帳」を取得しましょう(先代名義の財産も含めて)。
ただ、名寄帳は市町村ごとに管理をされているため、地方に保有している財産は漏れてしまうことがあります。そのため、遺言書を作成し記載をしておく、そこまではという方も多いと思いますのでどのような財産があるのかメモを残しておく、生前に財産の所在ついて話すをしておく必要があります。

(相続登記の義務化)

2024年4月より相続登記が義務化されました。相続税の申告が必要ないかたでも、相続登記は必要ですので、名義変更登記を忘れないようにしましょう!

3.税務調査の実績及び申告漏れを指摘された割合について

➀ 税務調査の実施件数は増加傾向?!

現在、税務調査は増加傾向にあります。新型コロナウイルス感染症の影響で、相続税の実地調査件数は減少傾向でした。しかし、令和3年から増加傾向にあり年々増加しております。
また簡易的な接触(文書や電話による連絡又は来署による面接により申告漏れ)も増加傾向にあります。

➁ 調査の割合は?

令和5年度の死亡者数は、157万人で、そのうち相続税の申告書を提出する必要があった方は15.5万人でした。相続税の申告書を提出する必要があった方は9.8%になります。
実地税務調査の件数は、8,556件になります。申告年度と調査の実施日がずれることはございますが、15.5万件の申告のうち8556件が調査と考える税務調査に入る確率は5.4%となります。

➂ 調査のうち申告漏れを指摘された件数は?

令和5年度、8556件の税務調査のうち、申告漏れを指摘されたのは7200件でした。84.2%が申告漏れとなっています。つまり、税務調査に入られるということは申告がもれている可能性が高いのです。

➃ 重いペナルティである重加算税が課された割合は?

相続税を逃れようと、意図的に財産を仮装、隠蔽しあえて少なく申告した場合には重加算税という重いペナルティが発生します。令和5年度、税務調査に入ったうち13.5%が重加算税を課されています。相続人が意図的に隠していないと思っていても、税務調査官にそのように判断されてしまう場合もあります。

➄ 重加算税が課されると納税は1.5倍に?!

重加算税が課されると、過少申告加算税という税金と合わせ45%、無申告で重加算税が課税されると50%のペナルティとなります。そのため、本来納めるべき税金の1.5倍を納税することになってしまいます。

4.税務調査に入られないようにするためには

時間がかかっても財産をしっかりと把握しましょう。そして、申告書類の作成過程の確認事項も明確に記録をしておきましょう。

弊事務所では財産漏れがないように、その先には税務調査の対象にならないような申告書作成を心がけております。
安く早く申告書を作成することはもちろん大切ですが、相続税の申告書は提出して終わりではなく、その後税務調査に入らないことで本当の終わりを迎えます。税務調査は申告書の提出から2~3年度に入ることが多いです。この期間は長く、不安な時期を過ごすのは大変つらいことです。そのため、税務調査に入られないような申告書、また入っても問題のない相続税申告を税務署へ提出することが一番重要ではないかと考えております。