亡くなる直前に今後の生活費や医療費の支払いなどを考えて、ご家族の方が普段より多く預金を引き出すことがあります。
相続税の申告の観点で重要な注意点があります。今回はこちらについてご紹介いたします。


1. 生前引き出し預金と相続財産の関係

亡くなる直前に引き出された預金は、相続財産から除外する場合と相続財産となるケースがあります。

① 相続財産から除外する場合

実際の生活費や医療費の支払いに使用した場合には、相続財産から除外します。
後々問題にならないために、引き出した預金の使用使途を領収書やメモで記録を残しておきましょう。

例)病院の医療費の支払いに使った⇒領収書の添付
  生活のためのクレジットカードの支払いのために預金を移動させた⇒移動先の口座をメモする
  日々の生活のために使った⇒領収書を保管する。難しい場合にはざっくりとしてでも大きな支払いはメモしておく。
※注意点
引き出した預金のうち相続開始直前に手許に残っている現金の残高もメモしておきましょう。
手許に残った現金は相続税の対象となります。これを申告しないと大きなペナルティが発生しますので忘れないようにしてください。

② 相続財産として申告する場合

下記の場合には、相続財産として申告をします。

・名義預金の扱い

引き出した預金を例えば家族名義の口座に移した場合であっても、その資金の出どころが被相続人でありかつ贈与の意思や証拠がない場合は「名義預金」として相続財産に含まれます。

・引き出した預金が、家族の個人的なものに使われていた場合

死亡直前に引き出された資金が、実際には被相続人のために使用されておらず相続人の個人的な支払いに使われていた場合には、本来は被相続人の財産となりますので相続財産に含まれます。

・使用用途が不明な場合

使用用途が不明な場合には、手元にお金が残っていなくても引き出した預金は相続財産となる可能性があります。

・贈与した現金

相続開始の直前に相続人へ贈与した預金は相続税の対象となります。「生前贈与加算」として、合算して相続税を計算することになります。贈与税を申告しているかどうかは関係ありません。

2.税務調査に注意しましょう!

亡くなる直前の出金については、税務署も特に注目しています。
何のために、誰のために、そして実際はだれが使ったのかが重視されます。
亡くなる直前に大きな出金があると、それが何に使われたかについて厳しく追及される可能性が高いです。

そのため、弊事務所では預金の入出金状況を相続開始の直前に関わらず、過去に遡って確認をしております。
相続人の方にとっても面倒な作業かとは思いますが、税務調査に備えて万全の準備をしております。また、 調査に入らないため、申告もれが無いよう、相続人の方が申告後も安心して生活ができるようにと考えております。

3.税務調査が入った場合

税務調査の結果、申告漏れが判明した場合には「修正申告」を行い不足している相続税を納めることになります。 また相続税の他にペナルティとして下記の税金がかされることになります。税務調査の結果、税額が増えた場合に課税されます。

・過少申告加算税(通常10~15%)
・重加算税(仮装・隠蔽があった場合は35~40%)
・延滞税(年利ベースで日割り計算)

① 過少申告加算税(かしょうしんこくかさんぜい)

税務調査などで、申告内容に誤りがあり、本来納めるべき税額よりも少なく申告していた場合に課されます。 これは、故意でなくても「結果的に税金を少なく申告してしまっていた」だけで課税対象になります。

・ 税率(2025年現在)

原則:10% 増額部分が50万円を超えると、超過分には15%

例:税務調査で200万円の申告漏れが見つかった場合
→ 最初の50万円 × 10% = 5万円
→ 残り150万円 × 15% = 22.5万円
→ 合計27.5万円が過少申告加算税

・ 減免されることもある?

以下のような場合は加算税が課されないか、軽減されることがあります
税務調査の事前通知前に自主的に修正申告を行った場合 → 加算税が軽減されます

② 重加算税(じゅうかさんぜい)

意図的に税金をごまかした場合(仮装・隠蔽行為)に課される厳しいペナルティです。
たとえば、通帳や財産を故意に隠していた場合などです。

・ 税率

原則:35% 無申告の場合(申告すらしていなかった)→ 40%

例:200万円の申告漏れが「隠蔽」と認定された場合
→ 200万円 × 35% = 70万円の重加算税

税務署は、特に相続税調査での現金の動きや扱いに敏感です。
悪意がなかったとしても、説明できないまま申告漏れがあると加算税の対象になります。

4.最大のポイント

曖昧な点がある場合は税理士に早めに相談をしましょう。
相続開始の直前に多額の預金を引き出す場合には、通帳・メモ・領収書など、金銭の動きを記録しておきましょう。